病院ブログ

尿検査のコツを伝授します!

2021.10.02 | ブログ

ブログ第5話の内容はみんな大好き「尿検査」について
診察時の問診でこういうやりとりがあります。
・何回もトイレに入って(猫)排尿ポーズを取るが少しだけしかでないんです
・おしっこが赤いんです
・何回もおしっこするんです
・おしっこの量が多いんです
これらに対する返答は、それでは「尿検査」をしましょう!となります。

え?採尿?どうやって採尿?できるかなー?

ごもっともです。ワンちゃんの雄であれば簡単な方です。猫ちゃんの飼い主さんは大変ですね。。。。
採尿しようと近づけば、トイレをやめてしまうし。。。

尿の取り方は「未使用の紙コップ」または「専用の採尿器(病院でもらえます)」を用意してください。
雄犬であれば、排尿時に気配を消して、放物線を描いている尿を空中でキャッチしてください。
雌犬であれば、地面ギリギリに専用の採尿器で空中キャッチしてください。
気配に鋭い犬の場合は、ペットシーツを裏返してビニール面に尿をしてもらってください。それを回収。
猫さんの場合はトイレの種類にもよりますが、システムトイレで、チップを利用している場合は回収するシーツを裏返してビニール面にしてもらい回収。
砂をご利用の場合は排尿ポジションに入ったら、気配を消して空中キャッチのため採尿器を忍ばせてください。
どうしても無理な場合は、あきらめることも肝心です!病院で採尿することもできますので!

話を戻します。

飼い主様から問診を完了したあと、獣医師は次のことを考えております。いわゆる獣医師の思考回路ですね。一部を紹介します。

思考回路①:おしっこが赤い血尿?→膀胱炎?結石?腫瘍?
思考回路②:おしっこが赤いヘモグロビン尿(血色素尿)?→溶血性貧血?バベシア症?ヘモプラズマ症?フィラリア症?タマネギ中毒?薬物や毒物?
思考回路③:おしっこが赤いミオグロビン尿(筋色素尿)?→筋炎?発作?過剰な運動?

これが獣医師の考えていることです。これを鑑別診断リストといいます。
症状に対して考えられる病気を覚えていること。さらにその病気の可能性を調べていくために追加検査を提案していくことで、真の病気を診断することになります。

つまり上記の思考回路では「おしっこが赤い」というワードに対して少なくとも12個の鑑別しなければならない疾患があることになります。

さてさてどうのように12個の中から病気を見つけ出し、治療を施していくのか。

まず最初に獣医師は「尿検査をしましょう♪」といいます。テンプレートのように、あいさつのようにいいます。
申し訳ないのですが、尿検査をするしか診断と治療がやはりできません。
もちろん、赤い尿以外にも「頻尿・尿が臭い」などがあれば、膀胱炎かな?とあたりをつけることができますが、腫瘍がないことや、結石がないことなどを診断しているわけではありませんので、尿検査が必要になります。

おしっこが赤い」という症状から反射的に血尿!と思われますが、実際には赤い尿は①血尿②血色素尿③筋色素尿に分類されます。
つまり、①血尿は出血が。②血色素尿は色素(ヘモグロビン)が。③筋色素尿は筋色素(ミオグロビン)が「赤い色をした尿」を作り出しています。
赤いだけで=血尿=出血は間違いになります。
飼い主様から「血尿」という問診を得たとしても、血色素尿や筋色素尿なのであれば、膀胱炎からかけ離れた病気の可能性があるからです。

この「赤い尿」問題を解決するには採尿した尿を遠心分離という技術を使うことで簡単に判断することができます。
遠心力をかけることで、質量があるものと、ないもの、少ないものを層状に分けることができます。

これをするだけで、あら不思議。血尿なのか血色素尿なのか、筋色素尿なのかすぐに判断できます。
つまりは血尿の場合は鑑別診断リスト12個のうち9個の病気が除外診断することが可能になります。

さて、まだまだ序盤ですよ!ここからです!

尿検査をお願いした時によくある質問があります。
・取れた尿はすぐ持ってきた方がいいですか?
・夜中に取れた場合はインターネットで調べたら冷蔵庫で冷やしてくださいってなってますが、冷やして大丈夫ですか?
・常温保存でいいですか?

この質問はとてもありがたいのですが、その症例に合わせた保存方法が好ましいとされております。
いわずもながら、採尿後すぐに検査が勿論ベストです!
冷やすべきか、常温保存がいいか問題がよくある質問になります。

まわりくどいので、尿サンプルの保存方法を記載します。ぜひご確認ください。

□冷暗所保存
・日の当たらない場所で涼しい場所
・採尿後2~3時間以内がベスト
・培養目的なのであれば、冷蔵保存
□冷蔵保存
・冷蔵庫で保存すること
・採尿後2~3時間以内に検査ができないのであれば冷蔵保存がベスト
・冷蔵保存であれば、一晩までは検査可能
・冷凍はNG!

まず温度の問題で以下のことが検査エラーとして起こりうる可能性があります。
尿を冷蔵すると、採尿検体の中で結晶化が進んだり、尿検査試験紙の反応遅延を起こします。
尿を常温で放置すると、雑菌などが増殖してしまいます。

冷やすと、結晶化してしまうということは、常温では無かったものが冷やすとでてくる!という意味なのでこれは検査エラーになります。
体の中では尿は温かいので、冷えることはありませんよね。
つまり体外に出た尿は冷えて結晶化しますので、体外に出た尿に結晶(結石)が確認されても冷蔵したから?それとも結石が膀胱にあるの?という考えに至ります。

尿を常温で保存すると、雑菌がすぐに増殖します。膀胱内にいた菌なのか、環境中(体外)の菌が確認されているかわからなくなります。
これに対応するには冷やすことです。みなさんも食品を腐らさないためにも冷蔵庫にいれますよね?常温だとすぐに腐りますよね?腐ることは雑菌増殖の結果ですよね。

冷やすと菌増殖を抑制できるけど、そのかわり結晶化してしまうことになります。逆に室温だと結晶化しないけど、雑菌が増えます。

結局、どっちがええねん。。。

まず、すぐに検査ができないのであれば最初は冷蔵で構いません。
最初の検査の後、獣医師の判断により2回目の以降の尿検査はその症例に合わせた保存方法を指示いたします。
雑菌の確認をする必要性がある場合は冷蔵保存が絶対条件になりますし、結晶を確認するのであれば常温かつ、なるべくすぐ検査を実施することをお願いします。

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