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重症熱性血小板減少症症候群(SFTS)

2025.06.10 | ブログ

重症熱性血小板減少症症候群(SFTS)とは
新規ウイルスによる感染症で、原因とされるウイルスは2018年に
ブニヤウイルス目、フェニュイウイルス科、バンヤウイルス属、ファイヤンシャン・バンヤンウイルスと命名された比較的新しいウイルスである。
以降は、旧名称であるSFTSウイルスと記載します。

まず、SFTSといえばマダニが媒介する「人獣共通感染症」であります。
つまり人と動物がマダニを介して共通して感染を受けるということになります。

また感染を受ける側としてはがとくに感受性が高く、感染すると重症化する傾向にあります。

徳島県内では2013年~2022年に計38人がマダニから感染し、9人が死亡していることが確認されております。

国内では西日本を中心に発生しており、2013年1月に感染が初めて確認され、毎年60~100人の感染者が出ています。重症化すると4~16人が死亡しています。

私は、獣医師ですので、ここでは動物に対する見解でご説明をいたします。

さきほど、述べたようにSFTSウイルスに感受性が高い動物としてが代表動物となります。

感染した猫は、多くが重症化し、集中的な治療が必要となります。
一方でウイルス血症を呈し、血液や体液、排泄物にウイルスが排泄されるために人への感染リスクを伴うことになります。
SFTSに感染した猫の致死率は高く、約60%が発症から7日以内に死亡します。

そして感染動物を管理する設備(感染病棟や隔離施設)や感染疾患への知識が伴っていない動物病院では受け入れが難しくなる傾向にあります。
感染した動物の検査のために使用した採血用針などを自分の体に誤って刺してしまう事故(針刺し事故)や
感染猫が人を噛んでしまう事故(咬傷事故)は特にウイルス濃度が高濃度(感染動物の血液や唾液には)となるため、注意が必要であります。

感染防護対策で個人防護服やマスクとゴーグル、手指の手袋は特に個人を守るために必要であります。
それらを持ち得ていない動物病院では入院看護を受け入れていることは私個人の考えとしてはやってはいけないことだと考えます。
獣医師として社会貢献を担う立場ですが、看護をする獣医師や看護師にも危険が伴います。
動物の取り扱いなどの教育が不十分であったり設備が整っていない環境ではいつか重大な事故を起こすかもしれません。
獣医師も看護師も誰かの子供です。不十分な環境で感染動物から感染が起きた場合にその責任を負えるかを院長は考えなけらばなりません。
教育をしていないのであれば、受け入れすること自体が問題になると私は考えます。

以上の理由により、受け入れが難しい動物病院では受け入れが可能な病院への紹介を検討する必要があると考えております。

実際に動物病院側のスタッフがSFTSウイルスに感染し入院治療を受けていたなどの報告もあり、今後も増加していく傾向にあります。
追記 2025年6月13日 三重県にて猫から獣医師へのSFTSウイルス感染による人の死亡が初めて確認されました。

ではなぜそこまで厄介な疾患なのかを紐解くにはSFTSウイルスの生活環が特殊であるからと考えられます。
そもそもがマダニを介して感染する感染症であるので、完全室内飼育猫よりも外出する猫に集中してみられます。
またそれよりも多いのは、弱っている野良猫さんの保護のため善意で連れてこられるケースです。

特に、猫への知識がない方が保護されるケースや、保護活動をしているボランティアさんが連れてくるなどのケースも多いと思います。
ただ、保護活動をされているかたは知識があるといえど、やはり専門知識とまではいきません。
ヒトに感染するウイルスを保持している可能性と感染経路を最低限でも頭にいれながらでないと最悪は保護時に咬傷などの事故を起こす可能性もありえます。
新規ウイルスとして最近確認され始めたウイルスですし、知識がないのは当然だと思います。

むしろ弱っている猫(明らかな外傷がない場合)はSFTS感染を起こしている可能性を考えて保護すること自体をするべきではないと思います。
厳しい言葉をかけますが、人が死ぬ という事実がある以上は行動に責任を持つしかありません。
中途半端な善意は必要ありません。。。言葉は厳しいですが。。。
飼い猫が外出して感染を受けた場合はどうするのか?
もちろん野良猫よりは事故は起こりにくいと考えますが、厳しい言葉をかけますが、マダニ予防をしてくださればそれだけでSFTSウイルス感染症を除外できる可能性が高まります。
SFTSウイルスの治療方法がないことを考えると感染しないようにするのが最善策です!予防してください。
この病気は感染してから治療するべき疾患ではありません!

北日本や東日本ではSFTSウイルスの知識を持ち得てはいるが、発生自体が少なく、対岸の火事として考えている先生もいるはずです。
獣医師は常に様々な疾患と向き合う側として鑑別診断リストの1つとして考えながら日々の診療を心掛けれないといけません。

猫ちゃんの立場としては、野良猫としては、何年も人や他の動物から自分の身を守って生きてきたため突然知らない人間や環境に連れてこられて触られたりすれば、恐怖ですし自分を守るための行動を取ることは容易に想像できます。

自分の愛猫や愛犬にとってしてあげれることは1にも2にもマダニ予防対策です!
マダニに噛まれてもすぐにはウイルスが入ることは少なく、吸血時間が長くなればなるほどウイルスが動物の体内に移動する可能性が高くなります。
最近のマダニ予防薬は食べるタイプや滴下剤が増えており、薬剤が動物の血液中に分布いたします。

マダニは1にも2にも吸血することが仕事ですので、薬剤入りの血液を吸血することで、即効性かつ狙い撃ちでマダニを駆除することが可能となります。
マダニ自体を体にくっつけたくないと考えた場合は忌避薬として血液中に薬剤が浸透せずに体表面に残存して効果を発揮するタイプの薬を併用するのがベストだと思います。
体についても吸血前に忌避薬の効果で弱って死亡もしくは体から離れることにまります。

マダニ予防は1年中となっております。
徳島県では対岸の火事ではなく、自分の身の回りに明日にでも起きても不思議ではない病気ですので、しっかり予防を心がげるようにお願いいたします。

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