本日のブログテーマは「自宅で採血!」となります。
理由もなく採血を推奨するわけではありません。今回は採血をすることで治療プランが立てやすくなる疾患がある動物限定になります。
その疾患は「糖尿病」になります。
「糖尿病」は尿中に糖が出現する(尿糖)病気でありますが、その前に血液中の糖が何らかの理由で高くなる(高血糖)ことから始まっております。
高血糖状態が続くと、血糖値が高い血液を介して腎臓に流入し、尿が生成されます。この時、血糖値が250mg/dl以上になると尿中に糖分が漏れ出してきます(尿糖出現)。
ではなぜ、高血糖になるのか?原因は血糖値を下げるべきホルモンである「インスリン」が何らかの理由で不足または作られなくなること、もしくはインスリンの反応が悪くなることが原因でスムーズに血糖値を下げれなくなるといわれております。
猫の糖尿病の場合、「肥満・膵炎・末端肥大症・クッシング症候群、医原性」が発症要因とされております。
高血糖を放置すると、初期には「多飲多尿・多食・体重減少」が起こります。進行するとケトアシドーシスを併発し一気に緊急性の高い状態へ悪化します。
また長期に高血糖になると、後ろ足の麻痺を特徴とした神経症状を起こす可能性もあります。
治療は、インスリンを補充してあげることであるため、飼い主様が注射を毎日することになります。
ただし、インスリンは血糖値を下げますので、効きすぎた場合は低血糖を引き起こす可能性もあります。
人間であれば自分で血糖値を測定して、ご飯を食べてからインスリンを注射できます。それでも低血糖になった場合は自分で飴玉をなめたりして低血糖を回避することも可能です。
動物におきかえてみましょう。ご飯を食べるかわかりませんよね。低血糖状態かわかりませんよね。
そこで、インスリンの必要量が定まるまでは、自宅で血糖値を測定してみようという提案になります。
自宅でする理由の一つに猫ちゃん特有の変化があるため、獣医師を悩ましてしまうからです。
実は猫ちゃんは病院にくるストレスで高血糖状態になる生物なのです。糖尿病でなくても、正常な猫ちゃんの反応なので、仕方がありません。
インスリン注射をした猫ちゃんを病院で採血して血糖値を計測しても異常に高くなってしまい、インスリン量が不足しているのか?と判断してしまうからです。
自宅に戻ると落ち着いてきて高血糖も改善されるので、インスリン不足と考え、必要以上のインスリンを注射してしまい、低血糖を招くこともありえます。
だから自宅の落ち着いた条件で血糖値を測定できると信憑性のある結果になる可能性が高いため自宅で採血!を推奨します。
まだ糖尿病の診断がついて、インスリン量を決定している最中、食欲がないけど、インスリンを注射するべきか悩んだとしても血糖値を測定すれば、その結果をもとにかかり付け医に連絡をしてインスリンが必要かも判断できます。
では早速、採血の説明をします。
まずはこれらを購入し、準備します(当院で購入可能です)。
画像(左):アルファトラック3グルコースメーター
画像(右):アルファトラック3テストストリップ
グルコースメーターにテストストリップを挿入し、血液を付着させると測定が可能となります。
では実際の採血から測定までの動画を載せておきます。
IMG_0085 (1):採決前の消毒(抗生剤入りの軟膏を塗ります。軟膏が油性なので、水性の血液をはじきやすくなり球状に血液が集まりやすい)
IMG_0086:血糖値測定後は消毒
以上となります。
採血後の止血は圧迫止血を1分程していただくと止まりますが、血圧が上がっている状態や興奮状態などでは止まりにくいこともあります。
採血をする場所は耳の辺縁沿いに血管が2-3mm内側を平行に走行します。
その血管はスマホのライトなどでも確認できます!
この内側の血管から毛細血管が辺縁まで走行しているので(目視はむずかしいです)、そこを適当に針を刺します。
耳を貫通させないように専用の針を用いて刺します。
すると、球状に血液が出てくるので、それを測定します。
以上が自宅で採血のお話です。
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