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AFAST!TFAST!なんそれ!?

2023.08.18 | ブログ

ブログ第18話「FAST:Focused Assessment with Sonography for Trauma(FAST)」

FASTとは人医療において超音波検査装置を用いて、迅速かつ正確に胸腔・腹腔内出血を診断する方法とされている。

鈍的外傷患者と原因不明の低血圧に陥った非外傷性患者に対する標準的な対処法とされている。

その目的は「胸腹部外傷において腹腔内や心嚢,胸腔内に出血の有無のみを確認する」ことである。

上記の文章を説明します。

鈍的外傷とは、腹部を殴られたりして、皮膚表面の見た目は正常に見えるが、腹部内部の肝臓などに裂傷が起きている場合をいいます。

対義語として、鋭的外傷(ナイフが腹部に達したなど)があります。

体の見た目で、腹部内にトラブルを起こしていると予想がつくのは、明らかに鋭的外傷だと思います。出血もしているだろうし、ナイフが刺さったままかもしれません。

鈍的外傷だと、見た目は普通か若干赤黒い程度の色調変化でしかないですが、腹部臓器に重傷をおっている可能性があります。この場合には腹部内を確認しなければなりません。

そこで活躍するのが、超音波検査装置になります。

動物にも上記の事は当てはまりますので、救急獣医師は同様に鈍的外傷患畜に適応して検査をしました。この結果、非外傷性患畜の一部で、

アナフィラキシー、心嚢水貯留・心臓タンポナーデ、胸水、非外傷性腹腔内出血、腹膜炎などを迅速的に診断することができることがわかってきました。

これらの結果、AFAST(腹部の迅速簡易超音波検査)が確立し、外傷性、非外傷性を問わずに検査を実施することが推奨されて検査方法や知識を共有するようになりました。

さてさて

要するに、急性経過でぐったりしている患畜、動けない患畜、明らかな外傷がない患畜、血圧が低い患畜、頻脈傾向の患畜が来院した場合はまずAFAST!

これにより、診断が可能になります。

ではでは実際の症例で説明をします。

超音波検査画像が何枚かでてきます。

主訴:犬が散歩中に突然ぐったり(虚脱)している。立てないし歩けない程。散歩も元気よくしていたが途中でぐったりしだした。

身体検査:可視粘膜色は正常からやや薄いピンク色、正常脈拍数と軽度脈圧低下。来院時は起立可能状態まで回復。

AFAST:胆嚢壁腫脹、肝臓周囲に腹水貯留(軽度)、脾臓捻転なし、脾臓出血なし、他の腹腔内臓器に異常なし、心臓周囲異常なし、胸水貯留なし。
赤線が重度に腫脹した胆嚢壁であり、「ハローサイン」または二重縁サインといいます。
赤矢印は微量の腹水貯留になります。

ハロー(光輪)サインはアナフィラキシーの時に生じる変化として代表的所見になります。

どうしてアナフィラキシーが起きると胆嚢壁が腫脹するのか?

ショック臓器(ショック状態に陥りやすい臓器)は犬の場合は消化管と肝臓になります。
アナフィラキシーショックが起きた時体の中では、肝臓へ入る門脈循環内でヒスタミンが大量に放出され、急激に肝静脈のうっ血が起こります。その結果胆嚢壁が肥厚します。
その後、しばらくして肝障害を示唆するALT(肝臓の逸脱酵素)が上昇してきます。
ただし、ハローサインはアナフィラキシー以外にも心臓タンポナーデやうっ血性心不全のような静脈還流およびリンパ還流の閉塞を起こす病態でも起こります。
膵炎や胆管肝炎、胆嚢炎、重度の低ALB血症でもハローサインは出現します。

では正常な胆嚢壁をおみせします。全然違うのが分かりますね。(治療後の胆嚢)

この患者では、血液検査も実施しており、胸部にも異常なし、貧血がないことや炎症反応なども起こっていないため、超音波検査所見と血液検査にてアナフィラキシーショックを呈したと判断しました。肝臓の逸脱酵素は重度に上昇。

治療に関しては省略させていただきます。

散歩中の出来事であったため、おそらく経口的、経皮的経路によりアレルゲンが侵入してきたと予想します。
例えば、虫や虫の毒、植物などが考えられます。

急性虚脱を起こした場合、鑑別診断は①アナフィラキシーショック②腹腔内出血③心タンポナーデを予想してAFAST、TFASTしていきます。

ハローサインがみつかれば、①or③を予想し、③の確認をします。

このように、迅速に診断が可能となり治療開始もスムーズに行えることになります。

適切な治療を行い、このわんちゃんも元気になりました!

皆様も、急性虚脱の場合は、命にかかわる病気が多いので、様子をみようなどとは考えずにすぐに相談してくださいね!

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