病院ブログ

腸内細菌叢のお話(ぱ~と2)

2025.02.17 | ブログ

ぱ~と2では具体的な治療法を説明します。
ディスバイオーシスを標的とした治療法として、①プロバイオティクス、②プレバイオティクス、③糞便移植療法があります。

【プロパイオティクス】
プロバイオティクスは造語であり、その言葉の定義は「十分量を摂取した時に、宿主に有益な効果を与える生きた微生物」とされています。
「生きた微生物」=「有用菌」(ぱ~と1参照)であり、それ以外には
腸内細菌学会が掲げる条件として
・安全性が保証
・もともと宿主(人、イヌ、ネコなど)の腸内細菌の一員
・胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達できる
・下部消化管で増殖可能
・宿主に対して明らかな有用効果を発揮できる
・食品などの形態で有効な菌数が維持できる
・安価かつ容易にとりおこなえる
上記を満たして、科学的に証明された特定の菌株を「プロバイオティクス」といいます。

【プロバイオティクスの仕事】
・消化管内のバリア機能改善
・病原性菌の増殖抑制
・免疫機能の改善
・短鎖脂肪酸の産生増加→消化吸収にかかわるエネルギー源となり、消化管内を弱酸性にすることで、病原性菌の増殖抑制、腸の蠕動運動促進、制御性T細胞の分化誘導を指揮する
・短鎖脂肪酸は血液を介して遠隔臓器にも作用し、抗炎症作用、免疫調整作用、脂質と糖質代謝の改善、血圧調整機能も有する

ヒトにおいてはプロバイオティクス治療を実施することで以下の事が期待される

便秘・下痢の改善、乳糖不耐性の改善、感染防御、アレルギー抑制、動脈硬化の予防に効果がみられることがわかっている

【プレバイオティクスとは】
プレバイオティクスとは、「大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることで、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分」と定義されている
該当するものは
①食物繊維(特に水溶性食物繊維)
②難消化性オリゴ糖
これらは有用菌の栄養源となりその増殖を促進することがわかっている

①食物繊維も②難消化性オリゴ糖は炭水化物に該当し、
炭水化物は消化・吸収できない食物繊維と糖質に分類される
食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分かれる

【食物繊維とは】
不溶性食物繊維は水を吸い膨らむことで容積を増やし腸の蠕動運動を促進する。→便秘改善効果の期待(代表的にはリグニン・セルロース)
水溶性食物繊維は大腸内の有用菌の栄養源となり(プレバイオティクス)、発酵するため発酵性繊維とも呼ばれ、代表的にはペクチン・グアーガムなどがある。
ペクチンはレモン、オレンジなどの柑橘類やりんご、バナナに多く含まれています
グアーガムはグアー豆のいわゆる胚乳(正確には子葉)部から得られる水溶性の天然多糖類のことである

動物病院でよく使用される水溶性食物繊維はサイリウムがあるが、
他の水溶性食物繊維と比較して発酵力が弱い。しかし保水力が強いためゼリー状に膨らみ粘性をもちその性質をもったまま排泄されるので、プレバイオティクスというより
下痢や便秘改善のために使用される
また動物のフードに入る、ビートパルプ・チコリーパルプは不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を含有する食物繊維である

【難消化性オリゴ糖とは】
胃や腸で消化されないオリゴ糖で、フラクトオリゴ糖があり、「ケストース」はフラクトオリゴ糖の1種である。

【糞便移植療法】
FMT(糞便微生物叢移植法)と呼ばれる治療法で、健常な人または動物の糞便中に存在する微生物叢を疾患に罹患した人または動物の消化管内に移植することで、ディスバイオーシスを改善させる
治療法である。

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