今回も症例シリーズ「犬の歯周病と口鼻瘻管(こうびろうかん)」について
数か月前より、くしゃみが多く、時には緑色の鼻水が飛び出すことに気づいて来院されたワンちゃんです
今回の症状ではまず、犬歯に問題を起こしている可能性が高くなります。
犬の口と鼻が病的に繋がってしまう状態のことを言い、犬の歯科では比較的多く遭遇する病気です。歯石を放置したままにしていると歯周病が進行していき細菌によって歯槽骨(顎骨)をだんだんと溶けていきます。上顎で歯周病が進行してしまうと、場所によっては歯根と鼻の穴の間の骨が非常に薄い部分で口鼻瘻管を形成することがあります。同様に下顎で歯周病が起こると骨が溶けてしまった場合は、骨の薄い部分で骨折することもあります。
上の写真の通り私の親指のちょうど真下に位置するのが犬歯になります。
その右下方向が黒く抜けているように見えます。これが重度の歯周ポケットになります。歯を支える土台が痩せたり炎症で脆くなっている状態です。
このポケット(隙間)に食べ物や、歯石が蓄積し、細菌によるトラブルが起こり始めます。
今回の治療はまず、口鼻瘻管を起こしている可能性が高い歯を特定し、その歯を抜歯しなければなりません。残念ながら温存することは不可能となります。さらに、口と鼻がつながっている部分を手術で修復する必要もあります。穴が開いたままであれば、食べ物や飲み水などが常に鼻に入ってしまいますので、鼻炎の改善は見込めません。
原因の歯を特定するには歯科用レントゲンが必要になりますが、今回の症例では充分な程の歯周病変化が起きているので、犬歯抜歯を先に進めました。
上写真:犬歯を抜歯した写真 青線が鼻粘膜露出
下写真:歯肉と頬粘膜をめくっているところ
犬歯を抜歯して、肉眼で鼻粘膜を確認できてしまったので、トラブルを起こした歯の特定はこの時点で可能です。
口鼻瘻管をさらに分かりやすくするための動画を載せておきます。
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先ほどの青い線の部分に生理食塩水を流し込みます。そうすると鼻から出てきましたね!
次はできた穴を修復する治療に入ります。
この手術を粘膜フラップ術といいます。
特に特別な手術ではありませんが、慣れてないとフラップした粘膜が定着せずに術後に離開してしまい穴が修復できない場合もあります。
すこし、縫合している糸数が多いと反省しております。
フラップは組織をはがし、その組織の血流を生かしたまま、別の組織に定着させる必要があります。
フラップがほどけないようにたくさん縫合したくなりますが、数が多いとそれだけ組織の血流を邪魔する可能性もあります。
術後3週間の写真です。
糸は2-3週間で溶ける糸を用いているので抜歯する必要はありません。
きれいにフラップも定着してますね!
症状もなくなって飼い主様もたいへん満足されていました!
このような状態になるまで悪化させないためにも、歯周病の早期診断と早期のデンタルケアを推奨しております。ぜひ来院の際はご相談してください!
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