病院ブログ

IRISとSDMAと腎臓病

2022.07.15 | ブログ

ブログ第11話(IRISとSDMAと腎臓病について)

IRIS(the International Renal Interest Society)は,通称「アイリス」。
小動物の腎臓病に対する科学的理解を深めることを目的に設立されたました。
IRISでは,2016年現在11ヵ国の獣医学専門家による理事会が主体となり, 犬と猫の腎臓病に対する臨床獣医師の診断,理解, 治療方法を向上させることを目標として活動しています。
IRISの主要な目的のひとつは, 小動物の腎臓病の推奨する治療方法に加え, 進行度を診断および評価する国際的ガイドライン(IRIS慢性腎臓病ステージング)を確立することにあります。

IRISという団体が推奨するガイドラインを参考にして、獣医師は飼い主様に根拠のある説明をしております。
また定期的にそのIRISのガイドラインはアップデートされております。
2019年には大きくアップデートされました。その内容を以下に記載しておきます。

【SDMAが腎臓病のステージングに採用】
2019年以前では、腎臓病のステージング(病態の進行度合いであり、初期や末期などの分類)には、CRE(クレアチニン)の数値を利用して判断しておりました。
2019年以降では、より正確にステージングするために従来のCRE(クレアチニン)と新しくSDMA(対称性ジメチルアルギニン)が追加されることになりました。
2019年以前にもSDMAマーカーは利用されていましたが、あくまでCRE(クレアチニン)を基準に『補助的』な位置づけでのマーカーでしかありませんでした。
またCREは筋肉量に左右されるマーカーであるが故に、痩せている猫では低い数値になります。このことで、ステージングを適切に評価できなくなることもあります。
2019年以降では新たにCREとSDMAの数値がステージングに合わない場合は2~4週間後に再測定すること、それでもステージが異なる場合はより高いステージを認識することを検討するようになりました。

2019年以前と以降でのIRISの違いを以下に記載しておきます。

~2019年
・CREで腎臓病ステージング
・SDMAはCREの補助

2019年~
・CREとSDMAで腎臓病ステージング
・【ステージ1】と【ステージ2の前期】の判断基準追加(下記の結果を1つ以上満たす)
①参考基準値内でのCREまたはSDMAの上昇(腎前性要因がないこと)
②持続的にSDMA>14μg/dL
③画像上の腎臓の異常
④持続的なタンパク尿 UP/C>0.4
・ステージ2以降の診断に【尿比重の低下】を追加
⑤CREとSDMAの両方の増加
尿比重の低下(犬<1.030 、猫<1.030)※猫は尿比重低下は必須ではない

①~④を順に掘り下げていきます。

【①参考基準値内でのCREまたはSDMAの上昇】
当院の血液検査機器はIDEXX社のカタリストを使用しております。カタリストにおけるCREの基準値は0.8~2.4mg/dLです。※基準値は使用している機械により異なります。
この基準値0.8~2.4の数値内であれば基準値です。しかし年々基準値内におさまるが、少しずつ上昇している場合をいいます。
つまり自分たちのペットの基準値を知らないとわからないことになりますので、定期的に健康診断などで検査をしておく必要があります。

【②持続的にSDMA>14μg/dL】
クレアチニンが正常でもSDMAが複数回に渡って参考基準値以上を示している場合です。
猫のSDMAは14μg/dl未満を基準としていますが、連続して14μg/dl以上を示していると腎臓病のステージ1の可能性があります。
※SDMAは15~20%は生理的に変動するため、1回だけ異常値が出ても腎臓病とはいえないので持続的に高いというのが重要です。

【③画像上の腎臓の異常】
レントゲン検査や超音波検査でわかる画像上の異常所見の有無

【④持続的なタンパク尿】
継続的に尿検査でタンパク尿が確認される場合は、UP/Cの測定を行うことをお勧めします。

以上がステージ1もしくはステージ2前期の腎臓病のステージングに関してのアップデートです。
では私がなぜ、ステージ1~2のアップデートを説明することになったかというと。
健康診断でSDMAや尿検査をすることにより、初期の腎臓病(ステージ1~2)の段階で診断をし、治療に取り組むことが必要と感じるからです。
この段階で診断できた場合おおよそですが、腎臓機能は60%の有余がありますが、ステージ2の後期と3~4については、残り30%程度しか余力はないとされております。
ステージ2~4については、多飲多尿や、食欲不振などの臨床症状も見られることが多いので飼い主様が気づくために容易に診断することができます。
ただしステージ1~2については症状はほとんどありません。血液検査や尿検査をすることでしか判断はできません。
早期に発見し、早期治療が施されれば腎臓の余力も確保される期間が増えることになります。
結果的に健康診断の必要性がありますが、普段から腎臓病のことで不安に思う場合は一度SDMA検査や尿検査を実施することをお勧めいたします。

【2019年度改正されたIRIS分類】

 

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