病院ブログ

腸内細菌叢のお話(ぱ~と1)

2025.02.15 | ブログ

腸内細菌叢のお話
はっきり言って、壮大なお話となります。
スターウォーズ全作やウォーキングデッド全作といったイメージでしょうか。

【腸内細菌叢の重要性】
まずは、ここからお話します。
腸内細菌叢とは人と動物の消化管内に宿主細胞と共存している多様な細菌集団のことを指します。
「共存」という言葉が重要となります。
近年の研究により、消化管は本来消化管バリアを構成する上皮細胞や消化吸収にかかわる細胞はもちろんのことですが、免疫細胞や内分泌細胞、神経細胞なども多く存在することが
分かってきました。
腸内細菌叢はそれらの細胞と密に相互作用していることもわかってきました。
また生体を構成する細胞は「短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)」や胆汁酸など、腸内細菌叢だけが産生・代謝できる物質の受容体を発現しているとされています。
このため、腸内細菌叢が産生・代謝した物質が消化管から吸収されると、生体の血流を介して消化管外の様々な臓器に運ばれ作用することが明らかになっています。

【腸内細菌叢の種類】
簡単に分けると
①有用菌(善玉菌)
②病原性菌(悪玉菌)
③日和見菌
そして
①有用菌:ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌(短鎖脂肪酸、ビタミンの合成、消化管吸収の補助、感染防御、免疫刺激などの機能)
②病原性菌:ウエルシュ菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌、緑膿菌(毒素の産生、腐敗の誘発などの害)
③日和見菌:バクテロイデス菌、大腸菌、連鎖球菌(健康時には何もしないが、病原性菌の勢力拡大に伴い悪影響を及ぼす)
ヒトでは、腸内細菌叢の割合として、①:②:③=2:1:7と言われています。

【ディスバイオーシスとは】
ディスバイオーシスとは正常なバランスを維持している細菌叢が乱れた状態に陥ることで、有用菌が占める割合の低下病原性菌の割合の増加あるいは細菌叢の多様性の減少のことをいいます。
ディスバイオーシスを起こす要因としては
・偏った食事(高脂質・高たんぱく、低食物繊維)
・薬(抗菌剤・プロトンポンプ阻害剤)
・サプリメント
・ストレス
・年齢
・遺伝的要因
・生活様式
があげられます。

【ディスバイオーシスが確認された動物の疾患】
慢性腸症
消化器型リンパ腫
膵外分泌不全
便秘
犬アトピー性皮膚炎
などが代表疾患となります。
つまりこれらの疾患の改善治療として、ディスバイオーシスを標的とした治療法が注目されております。
食事療法やプロ・プレバイオティクス、糞便移植療法があります。
従来、抗菌剤もディスバイオーシス改善効果のために投与されていたが耐性菌やワンヘルス問題、抗菌剤自体が持続性のディスバイオーシスを誘発することから現在は推奨されていません。

腸内細菌叢の乱れが、ある特定の疾患の発症要因となりうること。
また腸内細菌叢の改善こそが、疾患の治療法となりうる可能性について述べました。
次回からはディスバイオーシスに対してどのような治療法が選択されるかを説明していきます!

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